○桜井のバー 「みんな遅いねー」 扉をバーンとあけてレイネス「とびだせーるーのぉ♪」 「おっ来た来た。いらっしゃーい。  はいはーいご予約3名さまね。席こっちこっち」 「はーひっでぇ目にあった…マードレ、ワインちょーだい」 「はいはい…って、なんかみんなげっそりしてない?何かあった?」 「いや実はね…」経緯を話すヴィンツ。「まだちょっと頭痛い」 「ヴィンせんせーほっぺ冷やしたほうがいいんじゃない?」 おしぼりを押し付けるレイネス。 「ありゃありゃ。ちょっと応急手当だけでもしてあげようか?」 「ぐいぐいやめて痛いっていうかほっぺじゃないから!殴られたの後頭部!」 「あっそーだっけ?てへぺぃろ」 「てへぺぃろじゃないっての全く。あーじゃあ頼むわマードレお願い…」 「はいはい、冷やすなら綺麗にしてあるやつがあるからそれ使って…あーあー、ほんと何やってるのもう  …というか、襲われた?殴られた?ってことは、なにかやましいことでもあった?」 「ねえよ!」 「僕はまだやましいことなんて何もしてないぞ!!!!」 「(まだ)」 「いや春日井さんじゃないと思うよ、まだ」 「(YAMASHI?)」 「はーっ・・・まあ、最近はストーカー被害から傷害事件に発展するのもよくあるから気を付けてね」 「違うって!そんなメンヘラ食ってないから!やめて!」 「あーそうそう、本題ね。今日こんなうわさを聞いたのだけど」 かがち谺について話す桜井。 「そういえばアパート言った時にシノノメ先輩実家に帰ったって聞いたけど、  実家って・・・」 かがち谺は、探索者たちが現在いる都市部から、鈍行とバスで2時間程度の距離である。 東雲の地元は、かがち谺とほど近い。 「…となると、本格的に怪しくなってくるね、そこ。行ってみる価値はありそうかな…」 「そうだなー…こりゃ流石に怪しいよな…」 「ぬっ皆でカチコミする感じ?」目をキラキラさせるレイネス。 「困ったねえ…ほかにも尋ねてみようと思ってたところがあったんだけど。  あっそうだ。君たち、片喰陣ってひと知ってる?」 「カチコミはおいといて、調べた方がいいかもなー。カタバミ…さんは知らないな」 「僕も知らないよー」 「鈴掛さんの話では、東雲さんはこの人に入院中に会いに行ったそうだけど・・・」 「ふうん・・・入院中に会いに行ったって、怪しいねぇ」 かがち谺について、スマホで調べる桜井、ヴィンツ。 しかし目ぼしい情報は得られない。 「うーん…これは図書館で調べたほうが早いかなあ…」 ヴィンツのスマホに至っては、完全に落ちてしまった。 「あれっちょっと待ってスマホ動かないんだけどこれは…  あーあ完全に割れてんじゃん・・・殴られたときにイカレタかな…」 「あらら…。…さてと、明日はどうしようかねえ。  ヴィンちゃんのスマホもこうなったことだし、  図書館にかがち谺について調べたいところだけど、片喰さんにも接触したいし…」 「携帯ショップ行くのはいいけど、すぐ直るのかなこれ…まずかがち谺って電波入るのか?」 「電波は行ってみないと分からないねぇ・・・開き直ってそのまま持ち歩いたら?」 桜井に鈴掛から着信が入る。 「もしもし?」 「夜分遅くにすみません。今お電話大丈夫ですか?」 「ああうん、大丈夫。どうしました?」 「いえ、特に用件はないのですが、手が空いたので状況を聞いてみたいなと思いまして。  ……すみません、メール苦手なんです…。」 「ああそういうことでしたか!」 笑いつつ、桜井は3人から聞いたことを交えて説明する。 「かがち谺ですか……懐かしい名前ですね。」 「懐かしい・・・?・・・もしや、鈴掛さんや東雲さんのご実家もその近くだとか?」 「僕達は昔からの付き合いなので、皆地元が一緒なんですよ。東雲も僕も……片喰も。  ですが地元にはしばらく帰ってないですね。どうにもなんだか、足が伸びなくて。」 「片喰さんも?!…そういえば、調査では東雲さんは最近ご実家に戻られたとの証言があると…。」 「……東雲が、かがち谺に?……なんでまた、そんなところに…。」 怪訝そうな鈴掛。 「…そうだ。少し危険な話かもしれませんが」 桜井は、襲撃の件を鈴掛に伝える。 「……襲撃…?穏やかじゃない話ですね。犯人の特徴等はわかりますか?」 「ええっと…。……えっと、」 桜井はちらりと3人に目線をよこしつつ、「ストーカーの特徴は?」と筆談する。 手振りで答えるレイネス、ヴィンツ。 「フード被ってて、えっと…ぐりーんぐりーん?あっ、緑色の髪?で。」 「緑?また随分派手な……ああ、もしかしたら。  片喰がつるんでいる柄の悪い連中……特徴までは知りませんが、もしかしたらそいつらのうちの一人かも。」 「・・・ふむ」 「あー確かにな、コスプレでもないなら染めてんのか」 「となると、片喰さんの差し金・・・?やはり彼は何か知っている・・・?」 「(あんなに柄悪いのがまだ何人もいるのか……)」 「(俺あと何回殴られればいいんだろう)」 「マジなやんきぃじゃんよ\(^o^)/」 「……だとすると、まず片喰から接触した方がいいのかもしれませんね。  そんな連中を野放しにしては貴方の身が危ない。片喰の元に行くのなら、必ず僕を連れてください。  元々行くつもりでしたが、話を聞いて行かない訳にはいかなくなりました。」 「…ありがとう。そうね、やっぱり片喰邸に乗り込みましょう。」 「? お連れの方がいるんですか?」  電話越しの音声に首をかしげる鈴掛。 「…まぁいいや。そうですね、詰草書房に行く必要がありそうです。」 「あー…そうなのです。協力者、というか…助手です」 桜井はとっさに嘘を吐く。 「(探偵助手の医者…悪くない)」 「ジョシュですよー(`・ω・´)」 「えっ、初耳です。助手さんがいたんですね。すごいなぁ、伺った時は全然気がつきませんでした。」 鈴掛は素直に感心する。 桜井は3人にメモを書く『たった今からキミたちは私の助手になったからヨロシク(`・ω・´)b』 「詰草書房?」 「ええ、あれから気になって片喰の現在地を少し調べてみたんです。  古書店で合っていました。詰草書房、と言うようですね。」 「なるほど、古書店の名前でしたか。  …いっそのこと、明日乗り込みませんか?こちらも助手たちを連れて行きましょう」 「良いですね、明日は丁度僕も身体空いてるんです。ではこの時間でここに待ち合わせを…」 待ち合わせ場所をやりとりする鈴掛、桜井。 午後一番で、駅の石像前広場で待ち合わせることに。 「わかりました、では午後に広場前で待ち合わせしましょう、例の像の前の。  ……くれぐれも身辺、気をつけてくださいね?」 心配そうな鈴掛。 「わかりました。そちらこそ気を付けてね!」 「ありがとうございます。それでは。」 くすっと笑って、鈴掛は電話をきる。 「…というわけで、ゴメン。明日片喰さんち行くよ!」 「カチコミだー!」 「前々から思ってたけれどどこでそんな日本語を覚えてくるんだい君…」 「んー、じゃぱにーずお漫画?」 「おー。なんというか物凄いとんとん拍子だな。職場に連絡…」 そっとスマホを取り出すものの、壊れていたことを思い出すヴィンツ。 「……つらい」 「…店の電話、今から使うかい?」 「ありがとうマードレ…借りる…  帰ったら初期化しないと…前にバックアップ取ったのいつだ…」 「いいね、いっそウチの店も漫画置こうかな。…と、片喰邸へは明日の午後なわけだけど」 「あーじゃぽねーぜの漫画たのしいよな」 「私は図書館行くけど、皆はどうする?」 ○図書館 めいめい調べたいものを探す一行。 しかし桜井は館内で迷子、レイネスは小説コーナーで引っかかってしまう。 春日井とヴィンツは、手がかりになりそうな情報を発見するが……。 郷土史コーナー:かがち谺 付近の山一帯は昔から、鉱山としても栄えていた。 今は住む人もなく、村は近隣の町村と合併されてしまったようだ。 古新聞コーナー:蛇籠村事件(じゃかごむら-) 「蛇籠村事件 時効へ」 かがち谺に存在する山村、蛇籠村で起こった、事件だか事故だか判別しない、とある事件の記事だ。 事件だとしたら時効になる、ということのようだ。 事件が発生したのは、20年近く前のことらしい。 事件の概要 村民ほぼ全員が死亡した事件、あるいは事故。 事件か事故かははっきりせず、一晩で村民ほぼ全員が死ぬというのが不可思議すぎる、 また、現場の状況をみるに、自殺とも考えにくい。 そして、村からは、少年が一人だけ救出された。 少年は県外の施設へ預けられたそうだ。 「ジャカゴムラ事件、か…」 ヴィンツは 今の情報を ふかくこころに きざみこんだ。 「やっべ、時間無いか!?」 第4回へ続く